遺伝病について

遺伝性疾患について

ミニチュアシュナウザーに多くみられる遺伝性疾患について説明します。

純血種を繁殖するうえで、犬種標準にそって良い犬をブリーディングする事はブリーダーにとって、とても重要な事です。

だからと言って、姿かたちのみにこだわり、性格(内面)や健康を無視した形で繁殖を行う事は、人間の手で命を産み出す純血種の繁殖ではあるべき事ではないと考えております。

遺伝性疾患

大切なわんちゃんが病気になることは、飼い主様にとってもわんちゃんにとってもとても不幸な事です。

放棄されて殺処分をされてしまうわんちゃんは飼い主だけが悪でしょうか?健康で性格のわんちゃんの繁殖を、ブリーダーが心がけることによって、日本から殺処分されるわんちゃんは減るのかもしれません。

犬を迎える方には、ぜひこの事を知っておいて頂き、犬をむかえるブリーダー選びの選択肢として考慮していただければ。。と願います。

遺伝性疾患についての
考え方

私の遺伝疾患についての考え方のついて記載したいと思います。

私がブリーディングを始めた10年前、若年性白内障や門脈シャント、巨大食道症で苦しむ飼い主さんやシュナウザーを目の当たりにして、私が遺伝病をなくすブリーダーになる!!と意気込んでブリーディングを始めました。

アメリカに行き、話をする時はいつも鼻息あらく熱弁していたものです 苦笑

ブリーダー 植木 弘美

当時の私は少しの遺伝に起因する欠点でも神経質になり、ブリーダーに質問していました。

そんなある時、「HIROMI 命あるものなのだから、すべての欠陥を排除する事は出来ないんだよ?人間でも同じだろ?大切なのは命に係わるものから順番にブリーダーが順位をつけてコントロールすることなんだよ」と。。

それから自分の繁殖を通して学んだ事が沢山ありました。

良く“雑種は丈夫!”なんていう都市伝説がありますが、遺伝病をコントロールするというのは、どういう事なんでしょうか?

まず人間の場合、基本的に“近親結婚”という事は殆どありません。しかしながら犬や馬の場合、サラブレット、良い犬を作るためには血液を濃くするいわゆる近親結婚(ラインブリードやインブリードといわれるもの)を犬種標準を重視するブリーダーは行います。

この『インブリード』『ラインブリード』とは、良い犬を近い血液で交配する事により良い姿形のものが出やすくなりますし、姿かたちも親犬に似て安定すると言うメリットがあります。

でもここで注意しなくてはいけないのは、良いものも引き継ぎやすいぶん悪いものも色濃くでる場合はある。という事です。

ですから、遺伝疾患に関しては細心の注意をはらい、コントロールすることがブリーダーとして必要なのです。

では、“雑種は丈夫!!!”でしょうか?

血を濃くしていないからペットショップで売られている犬の方が安心でしょうか?

答えはNOです。

ある時、これもアメリカでのブリーダーとの会話からなのですが、私が菜々のパパのブリーダーと菜々の交配相手に関して相談した時の話です。

雑種 犬

彼とは違う血液のラインの○△のオスを交配したいと相談しました。そうすると、彼は菜々のラインが持っている白内障のラインをPRaAを過去に発症しているラインと混ぜるのは、今後のコントロールが難しくなる。

相手の血液や過去の遺伝疾患のデーターを考えずに、別の遺伝疾患をラインに混ぜてしまうのは、とても危険な事なんだよ。と。。。

ここから教わる事は、どんなバックグラウンドの遺伝疾患や病気を持っているかわからない犬は、純血種でも雑種でもリスクがある。

ペットショップ

そしてペットショップで流通されている多くの子は、ペットショップの販売員がその親犬や先祖犬の情報を知らない為どのようなリスクがあるか飼い主に説明できない。という事です。

このわんちゃんは健康ですか?と質問すると100%「健康ですよ!!」という返事が返ってくるでしょう。

その言葉を信じる事ほど飼い主様にとっては容易いことはありません。そんな簡単な言葉にどうか騙されないで下さい。これから迎える仔犬ちゃんと飼い主様との生活は15年は続くのですから。

ブリーダーにとって一番大切な事は、人間で産み出す純血種の交配にはできうる限りのデーターの収集と譲渡した仔犬達の行く末をしっかりと見届ける事です。

そして飼い主様にとって大切な事は、きちんとしたブリーダーから犬を迎えるという事と、今後のブリーダーの為に、適切な環境と管理で犬の健康を維持し、ブリーダーに仔犬の情報を提供する事が、将来、遺伝疾患で苦しむわんちゃんや殺処分されるわんちゃんが減るという事につながる事になります。

近年、【遺伝疾患】【健康診断実施】【シリアスブリーダー】というワードが普及してブリーダーの中には、そのワードを“売り”で商売する方も見受けられるようです。本当に検査をしているのか?どんな検査をしているのか?

しっかり確認を行い妥協しない事が、お迎えするわんちゃんに対しての飼い主様の安心度に繋がりますね(^^)

2017年 6月 植木 弘美。

主な遺伝性疾患

進行性網膜委縮症
PRA TYPE A

遺伝病として多くみられる眼の疾患でPRAと言われる眼疾患です。

PRAにも犬種によって、いろいろ種類がありますが、シュナウザーの場合TYPE Aというもので、現在米国のOPTIGENにてDNA検査が実施されています。眼の網膜が変形し萎縮する事で、いずれ失明する遺伝性の疾患。

初期には暗いところで見えづらくなり、進行すると明るい所でも視力に問題が出るようになり、いずれは視力を失います。物にぶつかりやすくなったり、眼で物を追わなくなった時には、この疾患の疑いがあります。

進行性網膜委縮症 PRA TYPE A

この疾患には手術で完治することも投薬で完治する事もありません。

本来なら繁殖ラインから外すべき疾患ですが、まだまだ現実的には、この病気を持っている犬でも繁殖するブリーダーがいるので注意が必要です。

若年性白内障

眼の中でレンズの役割をしている水晶体が白濁する疾患。

先天性→若年性→老年性 の白内障がありますが、ここで問題視するのは先天性と若年性の遺伝起因が大きく作用するものです。当然ですが、ブリーダーはこの疾患が発症した犬は繁殖ラインから外すべきです。

シュナウザーに多く見られる眼疾患で、アメリカのシリアスブリーダーのシュナウザーと交配を希望する場合の多くは、アイチェックの(眼に疾患がないという証明書)提示が必要になります。

産まれて2~3週間もすれば仔犬の目が開きます。その時は少しに濁ったような色をしているのですが1か月もしてしっかり目で物を追うようになればしだいに綺麗な澄んだ瞳になります。

白内障 犬

ところが生後半年くらいしても白濁した様子で、物の動きに反応が薄い場合は先天性の白内障の可能性があります。若年性白内障は周囲に発症しているデーターを総合すると、2~3歳くらいで発症する子が多いように思います。

片目の子もいますし、両目の子もいます。若年性白内障を発症してしまうと、急速に水晶体が白濁する場合が多く、早期に発見する事により、手術の成功率も上がるようです。

ただ、手術には高額な費用がかかる事と、術後の生活も制限される事、手術をしても白濁が将来的に発生しないという保証はないため手術をするかどうかは飼い主様がしっかりと獣医師と相談し決断する事が必要にだと考えます。

白内障は目に炎症を起こす場合も多く、緑内障が併発する場合もあるので、必ずしっかりとした眼科の先生に診てもらうようにしましょう。

以前、うちのシュナ達がアイチェックをっ実施して頂いている、眼科の先生が、白内障は歳をとると殆どの子がなるというわけではなく、白内障にならない子も沢山いるという事です。

後天的なものはストレスや外傷、紫外線を多く浴びたり、さまざまな原因があると思います。もし白内障になってしまった場合は、家の中の障害物をなるべく減らして、わんちゃんが快適に過ごせるように環境を整えてあげて下さいね。

巨大食道症

ご飯を食べると、口から入った物は食道を経て胃の中へ運ばれます。食道は収縮運動を行って食べ物を後ろへ運んでいきますが、この食道がダラーンと伸びきって胃の中に食べ物が上手に送り込まれない状態の事を
「巨大食道症」と言います。

シュナウザーの遺伝疾患として報告を受けている疾患となります。仔犬の時に頻繁に嘔吐する場合は、この病気の可能性があります。周囲で発症している子を見ると、短命な子が多いようです。外科的手術もできる場合もあるようなので、巨大食道症の臨床件数が多い獣医師に相談し、治療方針を決定する事をおすすめします。

巨大食道症

当ケネルは譲渡前に健康診断の中でレントゲン撮影を行います。
この検査によって、肝臓の大きさや心臓の大きさ、食道の異常などを発見する事がある程度可能です。

門脈体循環シャント

犬の門脈体循環シャントとは、本来肝臓に入るべき胃腸からの血液が、「シャント」と呼ばれる異常な血管を経由して、解毒を受けないまま全身を巡ってしまうことです。胃腸からの血液には数多くの毒素が含まれており健康な臓器では解毒を行ってくれるのですが、このように内臓に異常があると、体内で解毒が出来なくなるため体に悪い影響を及ぼしてしまいます。

門脈体循環シャント

この肝臓の異常は、正常であれば、胃腸からの血液は門脈(もんみゃく)と呼ばれる血管を通じて肝臓内に入り、そこで解毒を受けて全身を巡る血液循環に合流します。

しかしシャントにおいては、門脈から体循環につながる血管に不必要な血管ができてしまっているため、解毒を受けていない血液がそのまま体循環に流れてしまいます。ゆえに、有害な物質が体に循環してしまい、様々な弊害を生み出すと同時に肝臓が栄養失調に陥って小さく萎縮してしまいます。

仔犬

仔犬の頃にご飯を食べたら具合が悪くなったり、体が大きくならず細かったりする場合はこの病気の可能性があります。
シュナウザーの遺伝疾患に多くみられる病気のひとつです。

ある程度仔犬が成長すれば外科的手術が可能となり、手術後は天命をまっとうする子も最近は多いようです。

この病気の場合も臨床例が多い、きちんとした専門医に相談しましょう。

門脈シャントに関して大変わかりやすい説明をしているサイトを見つけましたのでリンク致します。

肺動脈狭窄症

肺動脈の根元が先天的に狭く、血液が心臓内をうまく流れない状態を言います。ミニチュア・シュナウザーで近年多く報告されている心臓の遺伝疾患となります。


狭窄が起こる場所は、大部分が弁のある部分ですが、まれにその上下で起こることもあります。血液の出口が狭いため、右心室への負荷が増えて心肥大を起こし収縮力が弱化します。また、肺動脈の血流量低下によって肺の血圧が低下し、呼吸困難等の症状を引き起こします。

軽症の場合ははっきりとした症状を見せず、一生心臓の奇形に気づかずにすごす子もいますが
重症の場合は、生後まもなく血液の循環不全で死亡してしまいます。 

症状が軽い場合は治療をせずに済む場合や薬物療法で症状をおさえる事も可能なようです。ただし、激しい運動や長時間のお散歩は控えましょう。

重症の場合は外科的手術が必要になる場合もあるようなので、臨床例の多い獣医に相談し、治療を行って下さい。